82 思ひわびさても命はあるものを 憂きに堪へぬは涙なりけり


歌人。藤原惟憲の曾孫。従五位上・右馬助。

現代語訳
つれない人のことを思い嘆きながら、絶えきれないと思った命はまだあるというのに、絶えきれずに流れてくるのは涙であったよ。

文法・語
「思ひわび」-「思ふ」+「侘ぶ」で、思い悩む
「さても」-それでも
「は」-区別を表す係助詞
「ものを」-逆接の接続助詞
「憂き」-ク活用の形容詞「憂し」の連体形で、想いがかなわない憂鬱の意
「に」-動作の対象を表す格助詞
「ぬ」-打消の助動詞「ず」の連体形
「は」-区別を表す係助詞。「命はある」と「たへぬは涙」を区別し、対比している
「けり」-初めて気付いたことを表す詠嘆の助動詞